フューチャーラボラトリ解剖学 第1回「ビジネスを、人をマネジメントする」とは?ベンチャーの神様がフューチャーラボラトリを丸ハダカにする!

フューチャーラボラトリに対しアドバイスをくださっている外部の有識者の方々に、フューチャーラボラトリとはなにか?

そして、橋本昌隆 がこれから成すべき事はなにか?をお聞きするのがこの「フューチャーラボラトリ解剖学」。

第1回は電電公社からNTTへの変革を経験し、数々のベンチャーの立ち上げに関わってきたベンチャーの神様、児玉充晴教授にお話をうかがいます。

児玉教授は国立、私立の大学教授を掛け持ちするエグゼクティブにも関わらず、とても人なつこい表情で人の心をとらえます。

しかも、大胆で鋭く毒舌も交えた発言内容を柔らかい言葉で表現する、話術の天才でもあります。

インタビューはフューチャーラボラトリにインターンとして在籍する名古屋大学大学院山内章恵さんが学生の視点でお話をお聞きします。

Guest

東京農工大学大学院(MOT)客員教授
中部大学経営情報学部(MBA)教授

児玉充晴

Interviewer

名古屋大学大学院情報科学研究科
社会システム情報学専攻

山内章恵

構成/執筆

チバヒデトシ(ジャーナリスト)

人の心をどうマネジメントするか!

山内:児玉先生の社会人としてのスタートはどのようなものでしたか?

児玉:専門は電子工学だったんですが、大学院を出て当時の電電公社、 いまのNTTに入社しました。研究所に行くつもりだったんですが、事業部に配属されまして、それが電電公社を“コミュニケーションズ”にどう変えるかという、私の20年間の戦いのはじまりでした。

児玉教授は1978年に京都大学工学部電子工学科の大学院修士課程を修められると、当時の日本電信電話公社に入社。おもに企業通信関係のビジネスを担当してきた。

山内:在職中にどのようなことが身に付きましたか?

児玉:そうですね。まず、どうやって人の心をマネジメントしてお金に 換えるか、という事です。

 技術はマネジメントしてもお金には換わりません。人の考え “ シンキング ” をマネジメントして、人にどう働いてもらうかを考えるからお金になるのであります。MOT〔 Management of Technology 〕においては、もう1つのMOTである〔 Management of Thinking 〕が大切なのです。

 NTTでの在職経験でわかった事はたったひとつでした。『人の持って生まれた素質は死ななきゃなおらない。変えようとしても無理だ』という事です。電電公社の人々のシンキングを変えようと頑張ったのですが、結局は変わりませんでした。

電電公社は変わらなかったと謙遜されている児玉教授だが、電電公社からNTTコミュニケーションズへの大きな変革も見守ってきた。

また、NTT初のベンチャーキャピタルを設立し、300社以上の中小企業、ベンチャーに対してコンサルティングを実施してきた。
これらの豊かな企業経験は、現在、経営手法を教える上で大いに影響していると言えるだろう。

名古屋大学大学院情報科学研究科
社会システム 情報学専攻
山内章恵

山内:20年お勤めになって、なぜ教職の道を選ばれたのですか?

児玉:昨年、53才でNTTを定年退職しました。

普通ならこの後は、NTTの子会社や取引先関係の企業に再就職するわけですが、そんな過去の延長線上の人生はいやだったんです。もっと自分の適性にあった仕事があるはずです。退職する5年前に、将来を見てもらうために成田の占い師のところに行きました。このとき、その占い師から「あなた特許を持っているでしょう。技術やビジネスに対して好奇心が旺盛で、書くことが好き。そこまで揃っていれば特許を持っててもおかしくない」とぴたりと言い当てられました。

 さらにその占い師から「学者の星が2つもあります」と言われました。それで技術とビジネスを教える教授になろうという目標を持ったのです。

 その目標達成のためにあらゆるチャンスをものにしようとしました。名工大の副学長に相談して、博士課程に入学したのもこの考えからです。その後、営業本部の仕事をしながら、死ぬ思いで工学博士号を取りました。

 20年前に名古屋にいたという縁があって、中部大学の客員教授をしていたのですが、定年退職後、経営情報学部の教授で来ないか?という学長のお誘いもあり、教職に就いたわけです。

チバ:20年で得てきた事をいまは教える立場にいらっしゃる。どんな事を教えていらっしゃるのですか?

児玉:私は定年退職間際にセールスエンジニアリング部長という役職に就いていました。企業に利益をもたらすセールスをエンジニアリングしていたわけです。ここで、今の企業に欠けている事柄を多く気づきました。現在、ここの部分を教えているわけです。

 ひとつは、技術をどうお金に換えるか、という『技術の換金学』です。それにはコミュニケーションが重要です。最近では一般的にコミュニケーションが下手になったと言われております。私は講義や講演で話をする事が多いのですが、お話する前に話の設計図を作ってからお話しています。これはコミュニケーションのコツのひとつです。

 もうひとつは、企業競争力をどう評価するか、です。金融機関が企業を評価する指標にはさまざまなものがあります。私は金融機関のSEの統括部長を6年半、NTTリースにも3年間いましたが、この経験で、企業が金融機関を評価する指標がよくないという事がわかりました。企業を評価する上で、その将来を調べなければならないのに「過去3年の決算書もってこい」という事ではお話にならない。彼らはそれでしか評価できないと思っているんです。

 人の将来は予測できます。その方法をSTAR手法と呼んでいますが、その人が進めるビジネス自体の将来が予測ができるのです。

児玉教授は、日本の企業におけるビジネス方法を研究し、利益獲得のための手法などを社会人を中心に教えている。

専門は、話題にも出ている企業が利益体質に変革するための「技術の換金学」や「経営心理学」、「営業心理学」、「経営管理手法」、「情報化時代の組織学」、「社員 のモチベーション向上方法」、「STAR手法による人材採用方法」など、利益向上に腐心する企業にとって、ビジネスの現場で実践的な戦略となり得る分野と言えるだろう。

チバ:具体的にはどのように人の将来を予測するのでしょうか?

児玉:過去、その人がとってきた行動を事前に調べておくと、将来の同じ状況においてその人は過去と同じ行動をとりやすいという法則を使うのです。「人間死ななきゃ治らない」という法則の応用ですね。それを橋本さんに当てはめたらどうなるか。

山内:丸ハダカにできるわけですね。

橋本:こ、怖いなぁ(笑)

フューチャーラボラトリが持っているものとは?

株式会社フューチャーラボラトリ
代表取締役社長
橋本 昌隆

児玉:いつも学生に教えているんですが、世の中に出て成功するには、遠慮していてはだめという事です。どうして遠慮するんですか?と聞くと「自分が小心だからです」と言うんです。これではダメです。 こうなりたい!と強く思っていないから、その日暮らしで、そのまま定年になって、最後には行くところない、という事になってしまう。人生の目標を持たなければならないんです。

 目標を持つのは簡単です。これまでに「あなた凄いですね」といわれた事があるでしょう。それを伸ばせばいいんです。自分では凄いとは思えない事も、人から見ればそれは凄い事なんです。その“凄い”を伸ばせば日本でナンバーワンになれます。

チバ:橋本さんの場合はどうでしょう?

児玉:橋本さんはこの企画を通じて、外からの眼で自分を見てください、と言っています。第三者が見ている事をしっかり認識していて、それをきちっとまとめあげようと言う。これは普通の企業にはできない事です。

東京農工大学大学院(MOT)
客員教授
中部大学 経営情報学部(MBA)
教授
児玉充晴氏

 だって、悪いところは治らないし、治らないところを治せというのは愚の骨頂です。まして、ベンチャー企業にとっては治しているヒマなんかないはずです。得意なところを伸ばし続けて、ナンバーワンになればいいんです。これまでも橋本さんにはその事を言い続けています。そして、それをやり続けている。そこが橋本さんのいい所。もっともいいところをわかっていて、それを聞き込んでのばそうと思っているんですね。

「自分のいいところを知って、それを伸ばし続ける。単純な事です」と 児玉教授は語る

しかし、自分のいいところを見つけるのはなかなか難しい事のようにも思える。それでは、どうすれば、自分のいいところが見えてくるのか?それは、児玉教授の次のエピソードを聞けば、見えてくるかもしれない。

児玉:ところで、僕はよく周囲の方に、「8時間も喋っていて疲れませんか?ストレスも溜るでしょう」と言われるんですが、ストレスが溜るどころか発散になっています。まったく苦にならないんです。 僕はそういう星に生まれたんですね。だから、その星をどう伸ばしていくか。そして、それが人の役に立つ仕事になる。こんな幸せな事はありませんね。この自分の星は成田の占い師が言ったとおりでしたね。

自分の良さは周囲が知らなくとも、自分を見つめ直せば、なにかしら見えてくるはず。そこをきちんと伸ばす事が大事なんだ、と児玉教授は教えてくれる。

有識者の方々にフューチャーラボラトリを掘り下げていただく「フューチャーラボラトリ解剖学」児玉充晴教授にいよいよ本格的に「フューチャーラボラトリを丸ハダカに」していただきます。

フューチャーラボラトリのビジョン

児玉先生に橋本昌隆について語っていただくとともに、橋本がいま何を考え、何を実行に移そうとしているのか、語っていきます。

チバ:まず、最初に児玉先生は橋本さんのどんなところを面白いと感じていらっしゃいますか?

児玉:在職中にどのようなことが身に付きましたか?

児玉:なんといっても、人脈形成力。これはピカイチですね。そして高度な営業力です。それも、ちょっとやそっとじゃないものすごく高度。これだけの人はめちゃくちゃ少ないんですよ。それもただガムシャラに行動力があるのではなく、コンセプト力のある高度営業力です。こうなると世の中にほとんどいませんね。当たり前の事ですが、社長には営業力がなければだめです。橋本さんは、まさにコンピュータ付きの高い営業力をもった経営者という事になります。こういう方はベンチャーの中でも珍しいです。

 そして、この時代、自分の分身を作ろうというのもなかなかいない。普通、オレがオレが、が社長というものですから、自分の分身を作って、他のヤツにやらせてみよう、というのはましてほとんどいません。凄いところの3つめが仕組みづくり屋という事ですね。橋本さんの場合は、とんでもない仕組みが内蔵しています。優秀な人材をインターンシップとする事で、“草”を放っているわけです。そうする事で、普通では知り得ない情報も取れるという事です。

山内:なんだかベタ褒めですね。

児玉:いやいや、もちろん欠点もあるんです。それは「あんた分かってても、まわりはさっぱりわかりません」という事。橋本さんは根回しが上手。そのあたりは抜かりはありません。ところが、その割には“人に考えを伝えるのが下手”ですね。

どうも上滑りしている感じ、と言えばいいんでしょうか。これは大事な事ですが、だからといって、それを直してしまってはいけないんです。

ツッコミにはボケが必要。

橋本さんがボケかどうかはわかりませんが、ボケならツッコミがいれば、それでいいんです。とにかく、これからの課題は、それをフォローする人が必要になるという事です。まず、橋本さんが何を目標にしていくのか、私はフォローし続けなければならないと考えています。

チバ:児玉先生より、“人に考えを伝えるのが下手”とのご指摘がありました。 いい機会ですので、児玉先生のお話を受けて、橋本さんが現在もっとも考えていて、力を入れている事を聞かせていただけますか?

橋本:これが一番という事ではないのですが、いまは「社会起業家」について考えています。本来、アメリカで生まれた時は、NPOとは儲けより、世のため人のために業を起こすもので、もともとはそういうものでしたが、いまでは社会的起業家=事業型NPOと言えます。なんでこんな事を言っているのかといいますと、僕は10年前に人材派遣の仕事をはじめたのですが、この仕事は基本的に弱者から搾取して儲ける商売という一面が今でも残っています。歴史をさかのぼると、戦前、もしかしたらもっと昔から単純労働者、つまり日雇いを大量に集めて、重労働させて、そこから搾取するといったものから始まっています。

山内:なんだか時代劇で悪役が出てきそうな場面を思い起こしますが、現実もそれほど変わらないものだったわけですね。そんな事がいまだにあるのでしょうか?

橋本:いいえ、もちろんいまはそんな事はありません。

人材派遣法という法律ができてから、人材派遣業も大きく変わってきたんです。

 ところが法律に守られるようになっても、派遣社員が大変な状況にあるのはあまり変わっていないと思います。人材派遣が必要とされているのは、今の世の中の流れです。中国やインドのコストに対抗する競争力をつけるため、正社員よりコスト競争力のある期間労働者を100人集めてほしい、といった人材派遣オーダーが多く、いまや派遣など非正規で働く人が1,700万人と言われています。

 あちこちの企業で人材派遣や請負での雇用問題が話題になっています。そうした課題は改善されなければなりませんが、当事者である派遣社員のための組合は、まずありません。正社員雇用を増やすといっている会社も多いのですが、海外資本が多く入っている会社は、株主からのプレッシャーも強いですし、組合との兼ね合いも合って、なかなか難しい話だと思います。

 さらにホワイトカラーエグゼンプションが導入されると、正社員をいつでも解雇できる状況になるでしょう。そうして上で守られている人と下の方の流動化する人との雇用の割合は、1:9になると思っています。それこそ年収300万というラインがボーダーになってくるわけですが、200~300万ぐらいがいまの派遣社員の年収にあたります。

 日本の好景気はこうした裏があって成り立っていると言えると思うのです。これは不健全以外の何者でもないと思います。雇用の問題、経済の問題からもっと違った側面での競争力を持った企業が必要ではないかと思います。

 大学や企業から新しい企画が立ち上がり、ベンチャーを作っていこうという動きがあります。フューチャーラボラトリは、そうしたベンチャーを生み出し、育てて行く会社にしたいと考えています。むしろ、NPOや社会起業家と呼ばれるエリアに、徐々にシフトしていきたいと思っています。

チバ:児玉先生のご指摘にもありましたが、フューチャーラボラトリでは、山内さんのように在学しながら、お仕事を手伝う、いわゆるインターンシップ制度を積極的に進めていますが、これはどういう考えから導入したのですか?

橋本:リスクを背負うには不安定な世の中ですので、これまでのように一人でやっていたらダメになると思ったのがきっかけです。そこで、分身というか、そういう働きをしてくれる人を置こう、というのがあり、その部分をインターンシップにやってもおうと思った訳です。

 弊社のインターンシップに応募してくる学生は、非常に優秀で学生の間に起業したいと希望するものも多く、学生の身分ではなかなか会えない大手企業の経営層、ベンチャーの社長、官公庁関係など、仕事の現場というものを知ってもらうだけでも、学生のみなさんにとっては、十分過ぎるほどのメリットがあるんですよ。

チバ:フューチャラボラトリも含め、起業しようとする時にはどこに目標を置いて、なにをすればいいのでしょう?

児玉:まず、それにはもうひとりの自分をどう外に作るかを考えなければなりません。3年前にマザーズに上場した企業の社長をフォローしつづけた事があるのですが、彼は人格を四分割して、いろんな人格を使いこなしていました。

 橋本さんも、今後、成長株だしうまくやれば上場できるでしょう。

 必要なのはどうやって企業を評価するかです。企業の将来は予測する事ができます。それはその人の過去の事から将来が予測できるのです。過去をどう解析し、どう分析するか。これまでやってきた事実、そこから将来を分析するのです。

ベンチャービジネスのプランには、過去を棚卸ししなければだめです。

計 画 未 来

十 現 在

過 去[たなおろし]

 ところが多くの人は、それを企業競争力評価論でやってしまいます。私は書店で売っている理論は一切やりません。それでは、どうするか。技術を金に換える知恵をもとに、プランを作ることができます。

山内:どのようにすれば、プランがたてられるでしょう?

児玉:第三者の眼から見たよいところを伸ばし続ければいいんです。それには僕とブレストすればいいんですよ(笑)2~3時間も僕と掛け合い漫才をやればプランが書けます。これまで、そうやって3年間で、300社のプランを書いてきました。

 業種業態は関係ありません。それほどマネジメントというものは同じなんです。それは、人間対人間なのですから、同じハズなんです。

橋本:そうですね。マネジメントは人と人ですからね。もともとフューチャーラボラトリもフューチャー“ライフデザイン”ラボラトリとつけようかと考えていました。その考えそのものは今も変わっていません。

だから

「人」にとっての

  • 新しい生き方
  • 新しい雇用スタイル
  • 新しい利益分配の仕組み

を、フューチャラボラトリから提案していきたいと考えています。

児玉先生、今日はお忙しいところありがとうございました。

チバ:児玉先生のお話、山内さんはどう受け止められましたか?

山内:「得意なところを伸ばし続けて、ナンバーワンになればいいんです」。この言葉は心に響きました。私は今まで、一人で何でもできるようにと思い続けてきたので。だからこれからは、「得意なところをもっと伸ばし、そうでないところは人にお願いする」。

これでいきます。その点、橋本さんは人にお願いするのがとても上手なんです。

チバ:お願いされた方も楽しそうにやっているから、いいんですよ(笑)

山内:楽しく仕事ができることは、就職するにあたって目指したいところです。